光・視環境部会
技術情報 》 研究結果報告
住まいのあかり改善
1.はじめに
 光・視環境部会では、“照明設備の改善によって、昼間及び夜間の視環境をどこまで改善することができるか”を体感・評価しました。サンプルとなった住戸は、築およそ30年の4階建て集合住宅の一階部分で、部会メンバーの住む社宅です。居住者のご厚意で生活実態そのままの状態での評価実験をすることができました。
 「ごく普通の照明」をきめ細かく改善して、視環境の「明視性」「安全性」「快適性」などがどのように改善されるかを検討しました。
2.実験の概要
実験場所;部会メンバーのK氏のお宅(N社の社宅)を選定。
 実験日時;2001年9月28日 13時〜22時 晴れ
 実験方法;実験者は二人一組で4班を構成し手分けして実行。
      昼間に採光の問題点と、補助照明を配慮した時の状態をチェックし、
      夜間は先ず現状の照明状態で評価し、改良案を仮設して評価。
 評価部位の照度測定;測定部位を設定し、時刻と共に測定記録した。
 評価方法;SD法と呼ばれる評価方法を用いて5段階の印象評価を行った。
      玄関の印象については、昼間は外光(日陰)に順応した状態で、夜間は
      屋外の暗さに順応した状態で行った。
 観察者(兼、実験者);11名
3.実験結果
3-1 対象住宅の平面図と照度測定点
K氏宅の現状設備と照度測定点
■玄関の印象評価と考察 明るさの感じ
玄関は、「昼光のみ」「昼光+現行照明」「夜間・現行照明」「夜間・センサー付き照明」の4項目において調査を実施しました。評価項目は、「明るさの感じ」「空間の好ましさ」などの心理面からの考察と、「足元の見え方」など安全性について考察しました。
 採光が全くなく、昼光のみだと暗すぎる玄関で、60Wの天井灯を灯してもやや暗いとの評価で、心理面・安全面においてもセンサー付き照明などの対応が望まれます。
★矢印(ポインター)を写真の上に重ねると、画像が切り替わります。
玄関 昼間 ドア開放 ふすまとカーテン開放P
PageTop
■食卓の印象評価と考察
 DKは1.現行品70W蛍光灯ペンダント(全般照明)と2.専用ペンダントを用いて、「空間の明るさ」や「あたたかさ」「食卓の明るさの感じ」「人の顔の肌色の見え方」などを考察しました。
 空間全体の明るさは1.が有利ですが、食事シーンにおいては、食卓上の見え方と食卓を囲む人の見え方の好ましさが、評価を左右します。照度分布で卓上をクローズアップし、周辺を闇のベールで覆うなどの工夫をすると快適度が増すと思われます。
空間の明るさ あたたかさ
■寝室の印象評価と考察 部屋の明るさの印象
 寝室は4.5畳の和室です。
1.従来品30W2灯ペンダント、
2.ツインPa70Nシーリング、
3.ツインPa70Lシーリング(電球色)を比較しました。
その結果、1.でも「快適な明るさ」を得られますが、2.を用いると、より快適な明るさであると評価されました。また、同じツインPa70でも“電球色”の方がさらに明るく感じるといった結果も得られました。
 寝室については、このほかに「あたたかみ」や「爽やかさ」「くつろぎ感」などについても考察しています。
PageTop
3-2. 特記すべき事項
1. 公団住宅やマンションなどの鉄製防火扉では採光窓がないものが殆どで、昼間でも補助照明が不可欠です。利便性と安全性向上のため、その普及が期待されます。
2. 狭小な玄関には、通常、60Wの照明器具が用いられますが、その明るさは十分とはいえません。空間の明るさ感や足元の見え方を向上させる必要があります。
3. 小さな洗面脱衣所の場合、FL20のミラーライトがあれば天井灯がなくても問題ありません。しかし、洗濯槽の中などに対しては別にタスクライトを設けるなどの配慮が必要となります。
4. 約2m2の小さな浴室でも、電球60Wではやや暗く、鬱陶しい印象です。蛍光灯であれば30Wでも十分明るく、爽やかな雰囲気になります。
5. 4畳半の和室は、30W×2灯のペンダントで特に問題はないと思われましたが、70W替えてみると、さらに快適な明るさとなり、開放感・活気・さわやかさなどは顕著に向上しました。
6. 寝室を想定した和室では圧倒的に電球色のシーリングライトが好まれる結果となりました。
7. 食卓の明かりは、シーリングライトを採用するケースが増えていますが、食べ物や器類を美しく見せるためには、食卓上を照らす演出をする方が良いでしょう。
8. キッチンの流し元やレンジ部などは、タスク面の明るさの確保や照明器具のグレアの配慮をするなど、適切な補助照明を用いれば快適な視環境となります。
4.あとがき
 この検証実験で、われわれは照明の担う明視性や快適性などに関する微妙な視覚心理的効果を確認することができました。住まいの光環境は住まい手のQOLに心理的・生理的にも大きな影響を及ぼすものであり、今後も追求していく必要があります。 
住まいのあかり改善 正規版 販売中!
当研究結果報告は、「住宅の採光及び照明の問題点を改善してその効果を検証するケーススタディー」の概要(抜粋)です。正規版は、日本健康住宅協会事務局にて販売いたしております。
ご購入はこちらからどうぞ。
PageTop