光・視環境部会
技術情報 》 研究結果報告
住まいのあかり 実態調査
1.はじめに
NPO 法人日本健康住宅協会光環境部会では、住宅における光環境のあり方について検討を進めています。まず、住宅における光環境の現状の問題点を把握するため、居住者自身で自己評価が可能な調査シートを作成し実態調査を行いました。
2.調査概要
2.1 調査用紙
住宅を玄関・居間等の用途に応じた空間に分類し、そこで行われる代表的な生活行為を抽出し、それぞれに要求される光環境の要件をまとめました。
その際、生活行為に配慮すべき要件を、生活行為を行う上で必要な要件(必要要件)と、よりよい光環境を得るための要件(推奨要件)に分類し居住者への啓蒙も試みました。
今回の調査では、上記要件に対する自己採点に加え、空間毎の改善を要すると考える事項(自由記述)・照明器具の台数およびワット数・採光状態に関する質問を追加し、回答者属性の記述を含めてA3版1枚にまとめました。表2.1(省略)に調査シートを示します。
2.2 調査対象
調査は部会メンバー所属会社社員ならびに関西大学学生を対象とし、1999年12月〜2000年2月に配布し、後日回収。配布にあたっては、世代や生活習慣の違いを考慮して、本人のみならず同居家族の方にも記入を依頼しました。
3.調査結果
3.1 概要
331名(283戸)の回答を得た。回答者の半数近くが学生だったため、年齢で10-19歳が、居住歴で0-1年の比率が大きい。回答者の概要を図2.1〜2.3(省略)に示します。
3.2 室別の照明設備の実態と光環境の自己評価結果
本実態調査で得られた居住者が個々の住居の光環境について下した評価には、光環境を形成する照明設備の影響が含まれています。
調査対象となった住居の照明設備の実態は、居住者の自己評価の背景となるばかりでなく、住宅の光環境の現状把握としても有効です。
ここでは照明設備の実態と居住者による光環境の自己評価結果を示します。
なお、調査の回答者は285住居に住む331の居住者です。
3.2.1 室別の照明設備
調査対象の内283住居について、使用照明器具の光源種別と台数及び総出力(W)を調査した結果から、室別の使用光源の種別を図3.4(省略)に示します。各空間の照明器具について記入のあった住居数を母数にし、光源の種別の相対度数をグラフで示しました。空間によっては未記入の住居があるが、対応空間がないなどが理由と考えられます。
(以下省略)
3.2.2 光環境の自己評価
光環境の評価にあたり配慮すべき要件を、空間毎に「生活行為を行う上で必要な要件」「よりよい光環境を得るための要件」に分けて列挙し、昼間と夜間において住居がそれら要件を満たすか否かを居住者に評価させました。図3.5(省略)に、夜間における「生活を行う上で必要な要件」についての評価結果を示します。各要件の評価を記入した居住者数を母数とし、評価の相対度数をグラフで示しました。
(以下省略)
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3.3 光環境の自己評価と照明設備の相関
空間の光環境評価は、採光状態や照明設備、内装等によって決定されますが、演出性や光量の調節を求められる居住空間では、特に照明設備の計画が評価に与える影響が大きいと想像できます。
演出性や調節を求められる空間としては、「居間」「食事室」「主寝室」があげられます。本報では、これらの空間に検討対象を絞って、自己評価の結果と照明設備の実態に関する調査データを整理し、その関連性について検討を行いました。
3.3.1 自己評価の項目
「居間」「食事室」「主寝室」の評価項目(配慮すべき要件)を表1に再掲する。この中で、“遮光”と“朝の光”は照明設備と関連しない項目であるため、検討の対象から除外した。また、調査では、昼間と夜間における評価を行っているが、照明設備と評価との関連性を明確にするために、検討は夜間の評価に基づいて行った。
3.3.2 自己評価と照明設備
各空間の自己評価と照明器具台数の関係を図3.6〜3.8に示します。
縦軸は評価結果であり、「○×n」は評価が○であった質問項目数を示し、「○×0」は、評価が全て×であったことを示しています。「全体」は全回答者の集計結果を示しています。また、横軸は各評価者ごとの照明器具台数の割合を示しています。
いずれの空間も、自己評価が高い回答者ほど照明器具の台数が多くなる傾向にあることが分かりました。
照明器具が多いことで、演出や光量の調節が可能となり、良好な光環境が得られていると考えられます。
図3.6 居間の光環境自己評価と照明器具台数グラフ
図3.7 食事室の光環境自己評価と照明器具台数グラフ
図3.8 主寝室の光環境自己評価と照明器具台数グラフ
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3.3.3 採光評価と照明設備
居間の採光評価と照明器具台数の関係を図3.9(省略)に示します。縦軸が採光の評価、横軸が照明器具台数の割合を示しています。結果より採光評価が高い回答者ほど照明器具の台数が多くなる傾向あることが分かりました。
(以下省略)
3.4 居住者による光環境改善点の指摘傾向
本調査では、調査票に自由記述欄を設けて現状に対する不満点あるいは改善したい点を具体的に回答させました。この項目では、居住者が前報において報告された自己評価を行った上で、自身の居住空間の光環境に関してどのような問題意識を抱いたかが現れていると思われます。
本報では、この自由記述欄の回答内容に着目し、居住者自身により指摘された光環境の改善点および不満点について、各室毎の傾向を検討しました。
3.4.1 自由回答記述の分類
自由記述による指摘事項の傾向を把握するため、以下のような集計を行いました。
回答内容を光環境の配慮すべき要素7項目(明視性、安全性、健康、快適性、省エネ、保守性、利便性)に分類し、7要素に当てはまらない内容は「その他」としました。
複数の要素にかかわる回答はその全要素にカウントし、これらを集計しました。
3.4.2 全体の傾向
集計結果の一覧を表3.1(省略)に示す。各室毎に最も指摘の多かった要素をアミカケで示しました。(以下省略)
3.4.3 各室別の傾向
「安全性」に関する指摘が多いのは玄関、廊下、階段などの移動空間とトイレ、老人室。また、居間、主寝室、子供室、老人室、和室などの長時間滞在する空間と食事室、洗面脱衣室などの演出性や見えを重視する空間では「快適性」に関する指摘が多い。(以下省略)
3.4.4 その他の指摘
(以下省略)
3.5 移動空間における考察
本報告では、玄関、廊下、階段に関する自由記述に着目し、住宅内で移動を伴う空間における光環境設計の課題について考察します。
玄関、廊下、階段に関する記述はそれぞれ126 件、106 件、60 件でした。
これらを記述内容から各室毎に「足元にあかりがほしい」、「器具配置等に問題あり」、「暗い」、「採光が足りない」、「センサーがほしい、スイッチ位置が悪い」、「明るすぎる」、「見にくい」に分類しました。
また、これらに該当しない記述は「その他」に分類しました。
なお、満足している状態や採光や照明と関係しないものも「その他」に分類した。記述内容の内訳を各室毎に図3.10〜3.12(省略)にそれぞれ示します。
3.5.1 玄関
記述内容で最も多かったのは、「足元にあかりがほしい」で、次いで「器具配置等に問題あり」、「暗い」の順でした。(以下省略)
3.5.2 廊下
記述内容で最も多かったのは、「足元にあかりがほしい」で、次いで「採光が足りない」、「暗い」の順でした。(以下省略)
3.5.3 階段
記述内容で最も多かったのは、「センサーがほしい、スイッチ位置が悪い」で、次いで「採光が足りない」、「見にくい」の順でした。(以下省略)
3.5.4 考察
玄関、廊下、階段に共通して「採光が足りない」という記述が目立ちました。(以下省略)
4.自由回答記述に関する分析と問題点の抽出
(省略)
5.まとめ
今回の調査において、ひとくちに「採光不足」といっても「移動空間の安全性」「居室の快適性」「サニタリーの明視性」など、空間によって要求される性能が異なることがわかりました。
また、集合住宅における移動空間の採光不足は、集合住宅特有の“間取り上の制約”によるところが大きいと考えられます。
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