光・視環境部会
「光・照明」なんでも情報館
目からウロコ情報【光情報】
進化する「窓ガラス」の実力
住まいにおいて、「窓」は採光や通風に欠かせず、また外観やインテリアのアクセントとしても重要な役割を担っています。それに加えて、最近では窓ガラスそのものに様々な機能が要求され、これに対応できる高機能窓ガラスが開発されています。これにより、住宅の住まい手は目的に合わせた窓ガラス品種を選ぶことができるようになりました。窓ガラスの種類と特徴や機能をご紹介します。
■窓に求められる機能と対応する窓ガラス 表中の各名称をクリックすると、画像付き解説にジャンプします。
窓に求められる機能と対応する窓ガラス 表
その他に、防火性能と断熱性能を併せ持つ「耐熱強化複層ガラス」、防音・防犯性能と断熱性能を併せ持つ「合わせ複層ガラス」「合わせ真空ガラス」、超高断熱性能を持つ「真空複層ガラス」などがあります。
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窓ガラスの種類と特徴
●フロート板ガラス
板ガラス構造図
単板ガラス。透明な板ガラスを一枚で使用する。一般の窓ガラスに最も多く使用される。
●網入り板ガラス
網入り板ガラス構造図
製造時に板ガラス中に金網を入れたもの。防火・飛散防止に優れる。火災の差違、火炎や火の粉の侵入を防ぎ、延焼をくい止めるので、法規上定められた箇所には使用が義務づけられている。また、万一破損しても破片の飛散脱落が少なく、破片による障害が少なくなるが、強化ガラスや合わせガラスのように割れても安全なガラスではないので、注意が必要。
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●強化ガラス・耐熱強化ガラス
強化ガラス構造図 防耐火ガラス構造図
板ガラスを加熱・急冷することで、フロート板ガラスの3〜5倍の強度を持ち、割れにくく、万一割れた場合にもガラス全面が粒状になるので安全。また、耐熱強化ガラスは防火性能を持ち、ワイヤレスな防火ガラスとして、安全で明るく開放的な空間を実現する。
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●合わせガラス・防犯合わせガラス・防音合わせガラス
合わせガラス構造図
二枚の板ガラスの間に透明で接着力の強い中間膜を挟み、加熱圧着したもの。紫外線カットや飛散防止性能に優れる。特殊な中間膜を用いて、防犯性能や防音性能を高めたものもある。
●複層ガラス・Low-E複層ガラス
複層ガラス構造図
二枚の板ガラスの間の空気層が熱伝達を防ぐ。ガラス表面にLow-E膜(特殊金属膜)を施したものは、放射による熱伝達も防ぎ、断熱性に優れる。省エネ・結露防止・快適空間に効果あり。
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●真空ガラス
真空ガラス構造図
二枚の板ガラスの間に真空層を設けたもので、魔法瓶と同じ原理で熱伝達を防ぎ、断熱性に優れる。複層ガラスと同様に、省エネ・結露防止・快適空間に効果あり。また単板ガラス用サッシに装着できるという特徴も備えており、既存住宅の窓のリフォーム断熱化も可能。
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この記事に使用されているイラストの著作権は、日本板硝子株式会社が所有しています。
各ガラスの詳しい説明は日本板硝子(株)のホームページでもご覧いただけます。
フロート板ガラス: http://glass-wonderland.jp/shurui/ita.html
網入り板ガラス: http://glass-wonderland.jp/shurui/bouka.html
強化ガラス: http://glass-wonderland.jp/shurui/kyouka.html
耐熱強化ガラス: http://glass-wonderland.jp/shurui/bouka.html
合わせガラス: http://glass-wonderland.jp/shurui/awase.html
防犯合わせガラス: http://glass-wonderland.jp/shurui/bouhan.html
防音合わせガラス: http://glass-wonderland.jp/shurui/bouon.html
複層ガラス: http://glass-wonderland.jp/shurui/fukusou.html
真空ガラス: http://glass-wonderland.jp/shurui/index.html
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■窓に求められる機能・性能
・断熱性能
断熱性能とは、室内外の温度差によって窓ガラスを通過する熱量をいかに小さくできるかを表すものです。熱貫流率という指標で表し、この値が小さいものほど断熱性能が良いと言えます。複層ガラス、Low-E複層ガラス、真空ガラスは断熱性に優れています。断熱性能の良い窓ガラスでは、例えば、冬の夜に室内の暖かい熱が室外へ逃げにくく、室内を快適にし、暖房エネルギーを減らすことができ、さらに窓ガラス面の結露発生の防止にも効果的です。
・遮熱性能
遮熱性能とは、室外側で受けた日射熱のうち室内へ侵入する熱量をいかに小さくできるかを表すものです。日射熱取得率という指標で表し、この値が小さいものほど遮熱性能が良いと言えます。日射遮蔽型のLow-Eガラスを用いた複層ガラスや真空ガラスは遮熱性に優れています。遮熱性能の良い窓ガラスでは、夏の日中に室内を涼しくし、冷房エネルギーを節約することができます。
・防犯性能
近年、侵入犯罪の増加とともに手口の凶悪化が進み、防犯対策の強化が必要となってきています。窓からの侵入を防ぐためには、破るのに時間がかかり、大きな音のするガラスを選択し、かつ補助錠を1カ所以上設置するなどの対策が重要です。防犯合わせガラスは、2枚の板ガラスの間に強靱で厚い中間膜やポリカーボネイト板を挟み込んでいるので、「こじ破り」や「うち破り」に対して優れた防犯性能を発揮します。
・安全性能
強化ガラスは、板ガラスを加熱・急冷することで、フロート板ガラスの3〜5倍の強度を持ち、割れにくく、万一割れた場合にもガラス全面が粒状になるので安全です。また、合わせガラスでは、二枚の板ガラスの間に透明で接着力の強い中間膜を挟み、加熱圧着しているので、地震時の窓枠の変形、家具などの衝突、強風時の風圧力、飛来物の衝突などで万一ガラスが破損してもガラス破片の脱落防止性能に優れ、飛散や脱落がほとんどありません。また、衝撃物に対する耐貫通性も高く安全です。
・防音性能
都市の過密化や交通機関の発達に伴い騒音公害が大きな社会問題となっています。建物の外からは飛行機・自動車・工場の音など、建物の内からはテレビ・ステレオ・楽器の音など、種々雑多な音が充満しています。開口部はもっとも騒音の透過・侵入しやすい部位であり、より快適な室内空間を作るには、開口部の防音性能を高めることが必要です。
 防音合わせガラスは防音特殊中間膜を挟み込んだ合わせガラスで、騒音によるガラス振動を中間膜が吸収することで音エネルギーを低減させるため、防音性能に優れています。
・防火性能
外壁の延焼のおそれのある部分に開口部を設ける場合、ガラスには防火ガラスを使用するように建築基準法で定められています。防火ガラスはこれまで網入り板ガラスが主流でしたが、耐熱強化ガラスはワイヤレスな防火ガラスとして、視界や眺望を遮ることなく安全で明るく開放的な空間を実現することができます。
・UVカット性能
地上に到達する太陽エネルギーには、私たちが色と明るさを感じる可視光線、熱として感じる赤外線の他に、紫外線が含まれています。紫外線には、人体に対しては、殺菌・ビタミンD合成など有効作用を持つ一方で、日焼けを起こしたり、皮膚ガンを誘発したりする作用を持つと言われています。また、木材、紙類、布類などに対しては変色・褪色させる作用を持ち、室内の家具やカーテン、カーペット、壁紙などの色あせの主な原因と考えられています。合わせガラスは、2枚の板ガラスの間に透明で接着力の強い中間膜を挟み込んで加熱圧着したもので、この中間膜が紫外線を吸収するため、紫外線を99%以上カットする特徴を持っています。したがって、窓ガラスを通して室内へ届く日射に対して、透明フロート板ガラスや複層ガラスよりも、室内の家具やカーテンなどの色あせを抑制する効果があると言えます。
注)変色・褪色は、紫外線以外に可視光線、熱、化学物質などによって生じることもありますので、ご注意ください。
【参考】窓ガラスの各種性能
  紫外線透過率(%) 可視光透過率(%) 日射透過率(%) 熱貫流率(W/m2K) 日射熱取得率(-)
フロート板ガラス 72.5 90.1 85.9 6.0 0.88
網入りガラス 59.7 86.5 77.7 5.8 0.83
合わせガラス 0.7 88.7 77.7 5.8 0.83
中間膜が複層ガラス 57.6 81.8 74.5 2.9 0.79
Low-E複層ガラス 14.2 69.7 35.4 1.6 0.39
真空ガラス 18.5 67.5 45.4 1.2 0.49
合わせ複層ガラス 0.1 80.5 66.5 2.8 0.77
合わせ真空ガラス 0.1 64.9 42.8 1.2 0.47
真空複層ガラス 7.4 58.2 28.9 0.9 0.34
※可視光透過率
資料提供:日本板硝子株式会社
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