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レポート
「メンテナンスフリーの新開発蓄熱型全熱交換器」について
 
「改正大気汚染防止法の概要と運用規制」について
 
サステナブル宣言と行動計画1、計画2
メンテナンスフリーの新開発蓄熱型全熱交換器について 


(株)フェニクス 環境機器計測部 桜井進一

 建築物の冷暖房時における熱損失を大幅に削減するとともに、居室のIAQを快適に維持するこのERV(Energy Recovery Ventilator)システムは、今から10年前にフィンランドのMG Innovations社が開発しました。良く知られているようにフィンランドは北緯60度よりも高緯度に位置し、冬場は大変厳しい環境になります。従って、早くから高気密・高断熱の建築が発達しており、室内空気を快適に維持するための換気に伴う大きな外気負荷が今でも問題となっています。このため、フィンランドを含めた北欧諸国では、建物の換気に伴う熱損失を削減するため、排気に含まれる熱エネルギーを効率良く回収し再び給気に移行させる熱交換器の利用・研究が特に盛んです。

 換気に用いられる空気対空気の熱交換器としては、静止した伝熱体(プレート)で熱交換を行う静止型熱交換器、または、回転する蓄熱体(ローター)に給気と排気を互いに対向するように通過させて熱交換を行う回転再生型熱交換器が良く知られていますが、厳冬期には熱交換セルの凍結を防止するため、熱交換効率を犠牲にする外気のバイパス、間欠運転、あるいは、追加の加温装置無しには運転することができず、また、熱交換器を使用することによって得られる利益が最も大きくなる夏季には、結露でもって運転が制限されてしまいます。

 また、両タイプとも、給気と排気が通過する熱交換セル(プレート型ならばプレートとプレートの間隙、ローター型ならば蓄熱体のハニカム構造)にホコリが堆積しやすく、このホコリの堆積は、熱交換効率の劣化、風量の低下、熱交換セルエレメント素材の劣化の進行、結露時の悪臭及びカビや細菌の繁殖等様々な問題を発生させるため、熱交換セルの定期的な点検及びクリーニング、または、交換が欠かせません。しかしながら、この様な作業は非常に煩瑣で素人には難しいため、メンテナンス作業は、コストの高い外部に依頼せざるを得ません。更には、顕熱と潜熱を同時に交換する全熱交換のタイプは、吸湿剤が水分(水蒸気)以外にも室内空気汚染物質を吸着するため、排気と給気のクロス汚染が危惧されています。

 ERVシステムは、従来の熱交換器が抱えている上記の諸問題を解決した革新的な全熱交換器と換気装置(給気及び排気用送風機)を一体化したシステムです。

基本原理(周期流蓄熱式熱交換器)
 一方の熱交換セルのアルミプレートに吸収蓄積された排気の熱エネルギーは、ロータリーバルブにより気流が切り替わると、その蓄積したエネルギーを給気に移すサイクルを繰り返します。
また、水蒸気がアルミプレートの表面に吸着または凝縮することにより、顕熱だけでなく潜熱の移行も同時に行われる。

ERVシステムの特長
−重いローター(蓄熱体)を回転させる代わりに、軽い特殊バルブを周期的に90°回転させるだけ
−負圧及び正圧の発生がない
−結露水の滞留が無い(結露水は次のサイクルで蒸発)
−凍結/降霜が無い(通年運手が可能)
−水分を補給せずに間接蒸発冷却(更なる省エネ)
−全熱交換効率平均65%(東京の冬のデータ)、熱交換効率は平均90%
−少ない漏洩(クロス汚染1%以下、大きな有効換気量) 
−セルフクリーニング(熱交換セルのプレート間隔が広く、しかも、サイクル毎に気流が反転するため、ホコリの堆積が無い−5年間はクリーニング不要、フィルタは外気側のみ必要、衛生的、メンテナンスフリー)
−丈夫な構造(透湿膜や吸湿層等の繊細な構造を使用していない−耐用年数が長い)
−低いライフサイクル


 ERVシステムは、凍結や結露を心配せず一年を通じて運転が可能で、熱交換の必要がないときは、ロータリーバルブの回転を止めるだけで心地よい外気を室内に導入することができます。この様に、従来の熱交換器に遜色のない熱交換効率を備えているだけでなく、熱交換セルでのホコリの堆積が原理的に発生しないため、煩瑣な点検やセルのクリーニングを必要としません、

 次世代省エネ基準(1999年)に従った最近の住宅では、高気密・高断熱による省エネ化が進んでおりますが、日本全体としての家庭での冷暖房にかかるエネルギー消費量は、世帯数の増加、高齢化による在宅時間の増大などにより少しずつ増加しております。(1990年度に比べ2000年度は約12%アップ)また、シックハウス対策で改正された建築基準法(2003年)では、機械換気設備による0.5回/hの居室の換気が義務化されたことにより、換気によるエネルギー損失が、住宅の熱損失係数Qに大きな影響を与えるようになっています。京都議定書が発行(2005年)した現在、温室効果ガスであるCO2その他を削減(1990年の排出量を基準レベルとして、2008〜2012年までに6%削減)するためには、家庭での冷暖房にかかる熱エネルギーの削減は、避けては通れません。また、快適性、プライバシー、IAQ、セキュリティの面からも、熱交換器が組み込まれた第一種セントラル換気を備えた住居が益々人々から望まれております。

 この様な熱交換器に対する潜在的な需要に対して、ERVシステムは、設置コストでは静止型熱交換器に比べて割高なものの、熱交換効率で殆ど遜色がないか優れており、しかも、環境条件によらず通年運転が可能で、メンテナンスフリーでランニングコストが低く、また、耐久性に優れているため、長期及び総合的に見れば、十分に一般住宅用の熱交換器として省エネに貢献が可能です。
将来構想として、ヒートポンプ方式の冷暖房装置とERVを組み合わせたシステムのCOPを高めるため、ERVシステムに相転移温度が20〜30℃のPCM(相転移蓄熱体)を組み合わせた新システムを現在開発中です。


ERVシステムの特長 (まとめ)
1. ローター蓄熱体を回転させる代わりに、軽い特殊バルブを周期的に90°回転させるだけ
2. 負圧及び正圧の発生がない
3. 結露水の滞留が無い(結露水は次のサイクルで蒸発)
4. 凍結/降霜が無い(通年運手が可能)
5. 水分を補給せずに間接蒸発冷却(更なる省エネ)
6. 全熱交換効率平均65%(東京の冬のデータ)、熱交換効率は平均90%
7. 少ない漏洩(クロス汚染1%以下、大きな有効換気量)
8. セルフクリーニング:熱交換セルのプレート間隔が広く、しかも、サイクル毎に気流が反転するため、ホコリの堆積が無い−5年間はクリーニング不要、フィルタは外気側のみ必要、衛生的、メンテナンスフリーである
9. 丈夫な構造(透湿膜や吸湿層等の繊細な構造を使用していない−耐用年数が長い)
10. 低いライフサイクル

 尚、設置コストでは静止型熱交換器に比べて割高なものの、熱交換効率で殆ど遜色がないか優れており、しかも、環境条件によらず通年運転が可能で、メンテナンスフリーでランニングコストが低く、また、耐久性に優れているため、長期及び総合的に見れば、十分に一般住宅用の熱交換器として省エネに貢献が可能であります。