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協会だより
更新日:2013年3月21日
◇ 3月のおたより  ◇
 

 ここ数日で一気に温かくなり、全国各地から桜の開花情報が寄せられている一方、花粉の飛散量も日に日に増えているようですが、皆さんお変わりないですか。

 さて今月は裁判事例からみた騒音問題を取り上げて見たいと思います。
 住人同士の騒音問題は、マンション居住者の大きな悩みの一つですが、法律的には被害を受けた側が音を出す側に対し、慰謝料等の損害賠償請求や、音の発生の原因となるフローリング床材の撤去、防音仕様への変更などを要求するということが争われます。その際争点となるのは、「受忍限度」という考え方です。

 人は日常生活を営むうえで、他人との関係を抜きには考えられません。実社会では、お互いに相手を思いやり、尊重しあいながら、「我慢すべきところは我慢する」ことが大切です。この「我慢すべきこと」の法律的な限界を意味するのが、「受忍限度」です。では、受忍限度内かどうかは、どのように判断するのでしょうか。

 多くの裁判例では、以下のように見解を示しています。
 「加害行為の有用性、妨害予防の簡便性、被害の程度及びその存続期間、その他の双方の主観的及び客観的な諸般の事情に鑑み、平均人の通常の感覚ないし感受性を基準として、一定限度までの騒音被害・生活妨害は、このような集合住宅における社会生活上止むを得ないものとして受忍すべきである一方、受忍限度を超える騒音被害・生活妨害は、不法行為を構成する」(東京地裁八王子支部平成8年7月30日判決ほか)
 つまり、当事者の置かれている具体的状況から、平均的な人の感覚と感受性をもとに、この程度のことなら許されるべき、と評価される範囲というものを事案ごとに判断していくということです。

 過去の裁判例を見ると、歩行音、椅子の引きずり音、掃除機の音、戸の開閉音などは避けられない生活音だとしています。また、子どもが椅子などから床に飛び降りたり、飛び跳ねたり駆け回ったりする音なども、長時間にわたって続くものではなく、子どもが生活する以上、不可避的に発生することとして、これらは受忍限度の範囲内と判断し、慰謝料請求を棄却した事例があります。(東京地裁平成3年11月12日判決、同地裁平成6年5月9日判決)

 もちろん、騒音が受忍限度外であると判断したケースもあります。
 マンションの既存床をフローリング床にリフォームした事例です。この時は、以下の点で生活音でありながら受忍限度を超える騒音であると判断され、請求者二人に合計150万円の慰謝料を認めました(東京地裁八王子支部平成8年7月30日判決)。

  1. フローリング床の有用性を認めつつも敷設の緊急性がなかった
  2. フローリング床による階下への騒音等の影響を認識しながら管理規約に違反する形で、階下の住人や管理組合への正規の届出をせずに工事を実施した
  3. 遮音性能のある床材の使用にそれほど費用がかからない
  4. 工事の前後で防音・遮音悪化の程度が著しい
  5. 被害の程度が早朝から深夜にわたり多数回かつ継続的なものである
 などが考慮され、生活音でありながら、受忍限度を超える騒音と認定して、請求を認めました。


 この事案では、事前の対応の不十分さ、共同住宅の周りへの配慮を欠いたルール違反、不誠実な態度など、音を出す側に問題となる事情があったと言えるでしょう。
 何れにしても騒音の加害者側が通常の生活範囲を逸脱しておらず、被害者側に誠意を持って接していれば慰謝料までは認めにくいという事だと思います。

以上DIAMOND online WEB記事引用

 KJKでは次世代健康FORUM2013を4月12日(金)に大阪で、4月18日(木)に東京でそれぞれ開催します。
参加費用は無料で詳細はHPに掲載しておりますので、ご興味のある方は是非アクセスして下さい。

本部 安藤研治
 
 
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