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施設見聞録
 <2004年47号(冬号)>
大阪ガス実験集合住宅NEXT21
地下鉄谷町6丁目から長堀通り沿いを東へ歩いて一筋目を南に曲がると、豊かな緑に覆われた一際目立つ建物が存在感を醸し出しています。ここが、大阪ガスの実験集合住宅NEXT21です。
NEXT21は、21世紀の都市での暮らしにおいて、ゆとりある生活と省エネルギー、環境共生の両立をテーマに、1990年2月にプロジェクト発足。1993年に竣工し、実際に人が住んで実験を開始しました。5年間を1つの単位とした居住実験は、現在、第2フェーズの4年目を迎えています。
今回は、「地球環境と人の暮らしへの配慮」という第2フェーズのテーマを中心に、NEXT21の挑戦について紹介します。
NEXT21の南側からの外観。中央は、住民の憩いの場となっている「エコロジカルガーデン」。
屋上から見たエコロジカルガーデン。緑は鳥や蝶が休息の場とし、川には鯉や金魚が生息するビオトープです。
 
●自然と共生する暮らしの理想型住宅
NEXT21の約1,000m2 ある植栽地は、8年目を迎えてしっかりと根付き、大規模な自然環境を造り出しています。都市部の暮らしにおいて、このような自然を身近に感じることができる緑地には様々な効果があります。
まず、植栽の葉陰や土が含む水分などによってヒートアイランド現象を和らげること。二酸化炭素の削減による空気の清浄、土がもたらす断熱効果。また、緑地は人の目にやさしく、木や土の香りからもリラクゼーション効果が得られ、住まい手のストレスを軽減し、安らぎを与えます。
また、22種類の野鳥がNEXT21に飛来し、そのうち5種類の鳥の巣が確認されています。これは、屋上だけでなく、各フロアに設けられた緑地の連続性と、野鳥の好む実のなる木や広葉樹、香木などを植えたことから得られた効果です。大阪の野鳥は、大阪城と天王寺公園を行き来しているようですが、そこへNEXT21が加わって、3つのポイントをネットワークにしていることも確認されました。
温熱環境の向上を示す熱画像写真。NEXT21は、近隣と比べてかなり低温であることがわかります。
 
●住棟エネルギーシステムを採用した省エネを実践
屋上緑化と並ぶNEXT21のもう一つの大きな特徴は、効率的な「コージェネレーション」を用いたエネルギーシステムです。第1フェーズの5年間は、燃料電池によるコージェネレーションシステムを設置していました。このシステムは、天然ガスから水素を取り出して、空気中の酸素と化学反応させて電気を作り、またその際に出る排熱を熱エネルギーとして使用するものです。日本で初めて集合住宅に燃料電池を導入した第1フェーズでは、4万時間を超える運転実績を積み、オールガス住宅の可能性を見出すことができました。また、省エネと環境性を両立できるこのシステムは、都市型集合住宅に好適であると確認されました。
第2フェーズでは、住宅の電気・熱需要に、よりフィットしたガスエンジンタイプの小型コージェネレーションを採用し、過剰な排熱を抑えて、省エネルギーを図りました。運転時の排熱を回収し、冬は暖房用温水を暖めるのに利用しています。また、夏の排熱利用機器として、氷蓄熱吸着式冷凍機の開発品を設置し、年間を通じて排熱利用の平準化を図っています。
地下1階に設置された小型コージェネレーション。この大きさで、全体の約3割にあたるエネルギーを担う。
 
第2フェーズで採用しているガスコージェネレーションシステム図。
 
●エネルギー使用情報システムによる省エネ促進
環境保全・省エネは、高効率エネルギーシステムや屋上緑化などの技術面だけでは達成できません。住まい手自らによる意識改革、省エネの工夫など、住環境に積極的に取り組むことが重要です。
第2フェーズでは、各家庭においての省エネを図るため、各住戸にエネルギー使用情報掲示板を設置しました。住戸内のエネルギー使用量を表示し、当月のエネルギー消費量や昨年との比較、当月累積量を知らせることで、住まい手の省エネ行動を促します。
 
●ストック住宅として街の財産へ
大量生産、大量消費、大量破棄といった使い捨て型の経済システムの根本を見直すべく、NEXT21は、住宅の長寿命化にも取り組みました。永く暮らすためには、物理的な耐久性と長期間の使用に対応できる可変性、住まい手の希望を叶えられる間取りの自由度や空間のゆとりなどが必要となります。そのため、建物は、スケルトン(構造躯体)、クラディング(外壁)、インフィル(内装設備)に分離された建築システムを採用。さらに、フレキシブル配管システムを導入しました。これで、長期耐久可能な構造躯体を確保しながら、外壁と内装設備の移動や再利用を行い、自由なリフォームが可能となりました。
 
●廃棄物の軽減と再資源化
各家庭から出る生ゴミは、各住戸に設置されたディスポーザーから、地下に送られます。地下では、生ゴミ廃水処理システム(アクアループシステム)によって処理し、水と気体(二酸化炭素、窒素など)に酸化分解します。水は、住戸トイレの洗浄水や植栽の散水に再利用することで、省エネに役立てています。さらに、紙、プラスティック、生ゴミ、余剰汚泥との複合処理の実験も行っており、ゴミゼロの集合住宅を目指しています。
生ゴミ排水処理システム(アクアループシステム)により、
省エネと環境保護といった課題をクリア。
 
●人と地球にやさしい建材と設備
住宅は、建てるときから使用した建材や設備の廃棄処理を考慮すること、人や地球の健康に配慮した素材を使用することが求められます。NEXT21では、廃棄物の分別や低温で焼却されたときに問題となるダイオキシン対応として、塩ビの使用をできるだけ回避しました。さらに、再利用可能な部材を採用して、廃棄物そのものの削減を目指しています。また、天然木や珪藻土など、体にやさしい自然素材を使用し、ホルムアルデヒドを代表とする有害物質を含む材料を極力排除して、健康住宅を実践しています。
 
●わが街感覚のコミュニティ形成の向上
NEXT21は、昔の町屋を立体的に構成した新しいスタイルの都市としてつくられています。階段や橋、廊下が回遊性のある動線を生み、袋小路や裏路地のある街路空間となって住まい手のコミュニケーションを広げ、子供達の安心な遊び場としても高い評価を得ています。
街路空間や緑地の管理は、住民の話し合いや共同作業によって、維持、向上を目指しており、現在は月に一度、家族総出で清掃を行っています。さらに、回収した廃材の木を利用した木工教室も開催され、コミュニケーションとリサイクルに対する意識の向上につながっています。
立体的な街路空間は、昔ながらの井戸端会議や子供たちの安全な遊び場として親しまれています。
 
入居前から行われている話し合い風景。この積み重ねが、住まい手のコミュニケーションを深めます。
 
●地球環境と人、住まい手に快適な空間の実現へ
人の暮らしが便利で豊かになることに躍起になっていた20世紀。それが、環境汚染問題を発生させ、今後は人類の存続そのものが脅かされています。これまでのライフスタイルや価値観を根本的に転換し、環境と人の暮らしを統合した社会を築き、次世代に引き継ぐこと。これが、人類に課せられた使命です。大阪ガスは、NEXT21における実験に基づき、住まいと暮らしの在り方を提案していきます。
●大阪ガス株式会社

リビング事業部 リビング開発部 企画開発チーム NEXT21
〒541-0046 大阪市中央区平野町4-1-2
TEL:06-6205-4645 FAX:06-6232-1993
大阪ガスホームページ http://www.osakagas.co.jp/
NEXT21ホームページ http://www.osakagas.co.jp/rd/next21/
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