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協会だより
更新日:2013年11月12日
◇ 11月のおたより  ◇
 
 11月に入りすっかり晩秋の様相を呈してきましたが、一方では季節外れの台風30号によりフィリピンで多数の犠牲者が出たことにお悔やみを申し上げます。
さて、今月はマゴットセラピーという珍しい治療法をご紹介したいと思います。

糖尿病はいまや6人に1人、40代以上では3人に1人がかかる国民病です。
この病気の恐ろしさは、それ自体というより、血管の内皮機能が障害されて起こるさまざまな合併症にあります。特に足の傷から潰瘍になり、感染を起こして下肢切断を余儀なくされることも多いのです。今、それらの潰瘍を全く意外な切り口、かつ単純なやり方で治癒する方法に注目が集まっています。

それは信じがたいことに、ウジ虫を使う治療法なのです。マゴットセラピーと呼ばれるこの治療法では、従来は治らなかった足の皮膚潰瘍が治癒し、下肢切断を回避できるケースもあるのだといいます。この治療に用いられるウジ虫は、クロバエ科に属するヒロズギギンバエの幼虫です。しかも治療法は、除菌したウジ虫を皮膚潰瘍部に閉じ込めて数日毎に交換するだけです。

一体、どのような仕組みで治癒へと至るのでしょうか? 皮膚は、外側から内側にむかって角質層、表皮、真皮、皮下組織というバームクーヘンのような層状の構造をなしており、真皮まで失われた皮膚潰瘍の場合、その上をしばしば白色調もしくは黒色調の壊死組織が覆います。通常の治療では、これを人工的に取り除くことにより、肉芽組織が形成されます。これに対してマゴットセラピーの場合、桁外れの食欲を持つウジ虫が全てを代行してくれるのです。マゴットは、傷の腐ったところだけをきれいに食べ、ついでに細菌もやっつけてくれ、やがては治癒へと至ります。この治療法には副作用がほとんどなく、麻酔も必要としません。また使用するのが医療用の無菌うじ虫ですので、傷に有害な生物を感染させる危険性は非常に低く、組織を攻撃することもありません。治療は基本的に通院で行い、1〜3週間程度の期間が必要です。治療費としては、現在日本国内では保険の適用は受けられませんが、数万円から20万円程度です。また日本国内でマゴットセラピーの症例は200程度ですが、海外では、年間100万人がマゴット治療を受けています。その多くは、褥(じょく)瘡(そう)性潰瘍の治療ややけど、糖尿病性の壊疽・壊死の治療ですが、やけどや静脈潰瘍、癌性潰瘍の治療などにもマゴットセラピーは使われています。

この治療法の歴史を見ると、古来数千年前から、オーストラリア先住民族のアボリジニ族や中米の古代マヤ族などにおいて、傷の治療のためにウジ虫を利用していた痕跡が見つかっています。近年で注目が集まるのは、1917年の戦場において。二人の負傷兵が大腿部を開放骨折し、腹部などにもかなり深い外傷を負っていました。ところが二人ともなぜか発熱はなく敗血症のような全身の感染症もありません。驚いた医師が傷口を覗き込むと、なんと何千匹もの数え切れないウジ虫が、うじゃうじゃと山のように湧いて動き回っていたのです。この出来事をきっかけにマゴットセラピーの研究は進展をみせますが、そこからの歩みはまさに一進一退です。1940年代以降、抗生物質の普及によりマゴットセラピーは急速に下火になったかと思えば、数十年の時を経て、抗生物質では治癒できない細菌が見つかり、再び注目が集まり出しました。マゴットセラピー確立までの歩みは、まさに再発見の歴史なのです。

たしかにショッキングで、ギョッとするような治療法ですが、きわめて現代的な慢性病によって引き起こされた疾患を、太古から連綿と受け継がれてきた方法で治療するとは、何とスケール感の大きな話なのでしょうか。そのドラマチックさと、自然のもつ治癒力の高さに驚きを隠せません。


引用文献:Web新刊超速レビュー『糖尿病とウジ虫治療』


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本部 安藤研治
 
 
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